大石田には「ぺそら漬」というちょっと変わった名前と製法のお漬物があります。
朝採りの茄子を唐辛子と塩で辛く漬け発酵させたお漬物です。
詳しくご紹介させていただきます。
◎ 名称の由来
『ぺそら』と言う意味は、方言で「水が染み込む」事や「柔らかくなる」事を総称して「『ぺそら』っとしている」と表現します。 しなびたナスの独特の食感が「『ぺそら』っとしている」ことから「ぺそら漬」と表現するようになったと思われます。
◎産 地
大石田町横山(来迎寺地区)の船頭達の間を中心に生まれた漬物。
大石田町は最上川舟運の一大拠点であり、村山地方の物資の集散地でした。
その様な背景からこの地区にぺそら漬が広がり、伝統的に家庭で引き継がれてきました。
◎ぺそら漬の由来
様々な説があり、
@由来1
昔、大石田横山に怠け者のお嫁さんがいて、採ってきたナスを直ぐには漬けずに桶の水の中に放り込んでおいた。数日してそれを見るとナスが脱色して白っぽくなっている。そのまま唐辛子と塩で漬けると、とても個性のある漬物が漬けあがった。(海藤忠男 2006北村山の歴史NO.8 北村山地域史研究会)
@由来2
「横山は船頭町といわれた程、かつては舟運で生活を営む人が多かったが、夏の漬け物の材料はナスしかなく、普通の漬け方では保存がきかない。そこで唐辛子と塩を使って船中食としたものが、やがて大石田一円から尾花沢地方まで広まっていった」
@由来3
「舟運の舟に積んだナスが、最上川の水をかぶって色落ちしてできた」
@由来4
「最上川が氾濫し、大量に水をかぶって色が抜けてしまったナスを捨てるのはもったいないと、唐辛子などを入れて漬けた」
などです。
製造の継承については、名称の由来のごとく俗称が継がれて、それからの判断となるが、山形県内においても古来より語られており、この最上川の中間点の一部だけの漬物であり、最上川舟運の拘りからの発祥とみると江戸初期以降と考えられます。
現在においても、山形県庁や村山支庁や公民活動を通して、ぺそら漬を中心とした作り方や料理等が伝承されています。口伝と主婦達の継承であるが、茄子、唐辛子という原料と少々の塩は今も同じです。
◎食品特性
夏季、採りたての茄子を一晩水に浸け色抜きをし、塩、赤唐辛子を入れて発酵させ、何度も漬け替えをしながら味を整えていく独自の製法。
山形県内において、この産地以外で製造されておらず、まったくこの地域独特の漬物であり、全国でも類例を見ない漬物です。
ちなみに山形県内でも他の地域で同じように漬けても、上手く出来ないそうです。
大石田町、尾花沢市はスイカの名産地ですが、朝晩の寒暖の差が大きい為であり、この寒暖の差がぺそら漬の発酵に適していると考えられています。
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